映画感想文 - AVATAR

古典的なモチーフを現代的なビジュアルで復刻した大衆迎合の映画。タイタニックが女性向けとするなら、こちらには男性向けで力強さと夢見がちな少年モノの要素がある。

大航海時代。ヨーロッパ人の主人公が、暗黒大陸アフリカで部族長の娘と出会い、やがて恋に落ち、文明からの脱却と自然回帰へ喜びを感じつつも、属する文化圏の隔たりから争いへと転じ、若い二人は困難を乗り越えて一緒になる…これがアーケタイプのシノプシス。どこかで見たような手垢のついた話である。

未来的なビジュアルと理屈による再構成が現代風のアレンジで面白く、SFオタクには堪らない。ただし、後半の戦争シーンはせっかくの設定を一面的に貶めてしまい、月並みなアクションで魅力を損ねてしまう。

異星パンドラの生物相がガイア仮説のようにニューロンと電気信号で結びついている設定が興味深い。一時期の東洋思想のようなスピリチュアルに、科学的な裏付けを与えて説得力を持たせている。

スターウォーズのフォースもそうだが、西洋文化の中では、SFの形を借りて「全ては合一である」といった思想を提示することは通俗的であるらしい。キリスト教から発された魂の不滅に、外来の輪廻が融合しているのかもしれない。未来的な信仰の好ましい発展形として、より不変とみなすことのできる拠り所を、SFを理由付けにして試作しているかのようだ。

それを考えると、人が操るエンジン式ロボットの登場に対比して、DNA的にこしらえた魂の乗り物(主人公達のナビィ)が存在する意味がわかるような気がする。

しかしこれを除けば、図式は単純すぎる。資本主義+産業 対 自然崇拝の構図ではどうみてもステレオタイプだし、地球側の急進派や武力派を代表する登場人物には短絡過ぎて深みがない。

見所を与えていて巧みであるのは、主人公が退役軍人で若くして車椅子に乗っていることや、双子の兄弟を亡くしたこと、そして空を飛ぶ夢を見ていたという語りだ。

歩けないはずのジェイクが初めてナビィの巨躯に乗り移って二本の足で大地を踏みしめる場面は、観客を感情的に引き込む。裸足が畑に埋まって指が黒土を掴む演出は見事の一言。

CGIによるビジュアルのクォリティの高さに至っては、どこまでが作り物でどれがライブアクションかを見破るのは不可能に近い。

翼竜を乗りこなす場面や部族のしきたりを身に着けていく場面は観ていてとても面白いのだが、二番煎じは否めない。そうした風習の具現化はあまりに愚直すぎて古くさく、他の映画でも同じモデルが繰り返し何度も使われている。原住民の信仰に関しては裏付けの妙味があったが、生活や暮らしぶりの描き方に目新しさが無かった。ナウシカやもののけ姫のような地盤と、ハリウッドが異なる所以だろうか。

退役軍人の車椅子青年がウォーヒーローになるのはターザンのように懐古趣味で少年漫画じみている。現代風に戯画化するならば、第9地区のようであるべきだろう。そこがAVATARの弱さでもあり、大衆迎合の強みでもある。神話的な焼き直しを人は好むから。

ともかく、夢見がちな人は主人公ジェイクを羨ましいと感じるはずだ。人生の負け組、砂時計の砂が残り少なくなっていくにつれて、二度目の誕生日が羨ましくない者はいない。
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