3.劇作家

「オルディネーターです、先生!」
 一番弟子のカシウス・オルシニウスが慌てて、裏口からおんぼろ書斎に入ってきた。
「困ります、困りますよ」
「だまれ、そこをのけ! クズが!」
 家政婦との押し問答が正面の扉越しに聞こえたかと思うと、インドリル・ブーツの重い響きが迫ってくる。バーン。扉が完全に開ききらないうちに、先頭の仮面が喋った。
「おまえがニシュッカ・アナブーサルか!」扉が壁から跳ね返ってくるが、二人目のブーツがブロックした。「当局が把握したところでは、トリビュナールをおとしめる戯曲を執筆しているそうだな! これは真実に相違ないか!」
 劇作家は肯定も否定も即答できなかった。その金ピカの仮面をこんな間近で見たのは初めてだったからだ。…鼻の辺りの穴からもの凄く荒い息が漏れて、金箔に細かい水滴が出来てる…。もう垂れるぞ。
「神妙にいたせ。下手な真似をすれば、命はないぞ!
「えっ」視野がまだらにチカチカする。心臓の鼓動が、オーク・バーバリアンと鉢合わせした時より早くなる。過呼吸になりそうだ。自称“一番弟子”の少年に向かって、なんとか言葉を絞り出す。「夜馬車に」
「先生! 先生! 俺に触るなってんだよ! このっ、金ピカやろう!」
 少年はまだ師匠を裏口から逃がそうと引っ張った。
「元気のいいガキだ。おまえも叛乱分子の一員として牢屋に入りたいか」
 少年には仮面の下で唇を歪ませてニヤリとするダークエルフが透けて見えた。
 金色の仮面と武具で固めたオルディネーター達は、書斎の机や本棚をくまなく引っかき回し、目的のものを見つけた。
「これです」
「なるほど、異端のネレヴァリン思想だ」
 仮面の羽根飾り同士が触れ合って、まるで雄鳥が秘密の談合をしているみたいだった。
「明日は30分遅く鳴くんだぞ」
「オッケコゥ」
 一番弟子は勝手に出てきた寸劇を閉め出そうと頑張った。
「ネレヴァだよ! ヴィヴェク神のともだち。異端じゃない!」
 劇作家の下書きを盗み読みしていた弟子は異議を申し立てた。
「証拠は揃った。そいつを連行せよ」
「イエス・サー!」
「ちょっと! 旦那様をどこへ連れて行くの!」
 家政婦が食い下がる。オルディネーター達はそれには答えず、劇作家の首と両手首に枷をはめ、鎖を引っ張りながら、ヴィヴェク・シティーの法務院へ繋がる通路へ行進していった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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