Singularity 詳解と評

ノーマル難易度をクリアした。物語はかなり面白い。過去と現在を行ったり来たりや、大きな舞台転換は楽しかった。朽ちた巨大な船をまるごと復元してしまったり、破天荒さはなかなかだ(Force UnleashedのForceもびっくりの荒技)。衝撃の結末(?)も、それなりに楽しめた。

やや物足りないガンバトル

一方で『戦闘を楽しむ』という域には、さほど達してない。中盤からエイムの正確性を問われる敵も出てくる為、Xbox360コントローラよりも、マウスとキーボードの方が難易度が下がる。ところが、Xbox360コントローラでないと、振動機能による被弾状態が伝わらない。

全体的な難易度はカジュアル向け。私のようなヘタレがクリアできるのだから、そうそう難しい部類ではない。物語の進行を堪能する上で、カジュアル寄りの方向性は間違っていないように思う。ただし、戦闘もきっちり楽しみたい向きには難があるようだ。

戦闘の何が駄目かというと、序盤のアップグレードがろくに進んでいない条件だと、不利な状況下での一撃死が多い。数発殴られると死ぬ。ヘルス回復中、あるいはリロード中に撃たれまくって死ぬ。つまり、基本は自身が弱い事を意識して、大量の敵を捌きやすい高台で一切近づけずに頑張る(対・青グール)とか、物陰に隠れてひたすらヘッドショットしまくる(対兵士)とか、環境を上手く利用する事が奨められているようなのだが、勢い、力業が可能で、トライ&エラーをついついやってしまう。アップグレード前提である為、素の状態はさして強くないのだ。

逆に後半になるとアップグレードが勝ちすぎて、どんな敵でも仕留めやすくなってしまう。その分、大勢を相手にする事になるわけだが、マウスとキーボードであれば、それほど問題ではない。Xbox360コントローラのエイム・アシストだけでは、少々心許ないか。後述のDeadLockを活用しないと捌きづらい場面が用意されている。この辺りのデザインは、路線変更されたDead Space 2に近い印象を受けた。

武装は、得意のアサルトライフルかショットガンかガトリングガンのいずれかをアップグレードするだけで足りてしまう。ショットガンは距離のある場面では届かないので、敵兵士が落とすアサルトライフルをアップグレードしておくとツブシが利く。いずれにしろ、一度に二挺(2種類)+その場限りの一挺(1種類)しか許されない為、自ずと使いたい武器は限られていく。

確かに相手に有効な武器がデモンストレーションされる場面はあるのだが、その場限りの短めなステージであったり、あらかじめ用意していなくても『都合のよい武器が目の前に置いてある』といった救済策だったりと、『奮い立たせる』というよりは、『お膳立てされすぎ』な違和感が生じてしまう。もちろん、チュートリアルの意味合いを兼ねた演出なのだとは思うが。

むしろ、普通に敵がわらわらと湧いてくる状況下で、戦略的に武装をセレクトして闘いたい、というプレイヤーの欲求に応えきれていない場面が目立つようだ(武装が二つのみという縛りと、事前の武器ロッカーの位置で決まってしまう為)。TMDの便利能力と併用すれば、戦略の幅はあるのだが、もっとシューター寄りのゲームに見えてしまうという事実を活用できていないのはマイナスだろう。

マルチエンディングが直前のセーブポイントから全てお試し可能な事と、戦闘が魅力的でない事の二つの理由から、リプレイの意欲を湧かすのは難しいようだ。もっとも、私はハードでリプレイして、物語の流れを再確認している最中だが。

非現実なPerks

Sci-Fiガジェットはパズルを提供する目的で登場している。Dead Spaceから大きく影響を受けている事は間違いなく、非常に似通った要素が多く出てくる。ただし、Dead Spaceのような、『こうしたパワーを身につけていく、もっともらしい裏付け』感は乏しく、多くはゲーム的な便宜を図る為のご都合主義でしかない。ここがSci-Fi的な物語に反して弱点に写る。

そのいい例がアップグレードだろう。全てのパワーがTMD由来であるならば、まだ説得力は高い。ところが、Perksには、ドロップアイテムの確率操作や、主人公の身体能力の底上げが用意されている。Captain Renkoは果たしてフリーマン博士のような特殊スーツを着ていただろうか? 一介の兵士だったと思うのだが。いずれにしろ、RPG要素で目にするスキルでも、これほど大胆なインチキにはお目にかかったことがない。このシューターの設定背景とゲーム性には不似合いなのではないか?

例えば、Hero PerksにInventoryというものがあり、これは『携行可能ヘルスパックの量を増やす』とある。物理的にどうしてこのような事が可能になるのかという説得力が乏しい。新式のベルトを拾ったから、程度の理由は必要だろう。ところが、インスタントに能力を買えてしまう。全ては、Barisovが考案した青写真のおかげ、という事なのだ。そんなFantasticパワーに溢れる主人公であるのに、現実的なガスマスクだけは必須なのだから、可笑しい。

アップグレード要素を随所に可能にした事で、昨今のカジュアルなコンソール・ユーザーに応えるものになったかもしれないが、代償として、シューター寄りのガチンコ勝負からは遠のいてしまった。

どこかで見たパズル要素

物理パズルの亜流といった雰囲気で、TMD(Time Manipulation Device)を用いたもの。中盤までによく使われる例を挙げてみよう。

・踏み台を作る、移動する、ジャッキの代わりにする
・アイテムを得る(復元した朽ちた箱の中身)
・復元してスイッチ類を操作可能にする
・巨大ファンの時間を止めて通り抜ける
・植物を生長させて通り抜けられる道を作る
・敵兵を骸骨(または死肉漁り)に変化させる
・衝撃波で敵を押し返す(虫を潰す)
・壁の文字を読める状態にする
・テープレコーダを復元する(再生する為に)
・足跡の表示(行くべき場所への道しるべ)

踏み台は、物理パズルを発明したHalf-Life 2の名前を出すまでもなく、物理エンジン採用のゲームに等しく共通可能な要素だ。Singularityでは、朽ちた箱が復元されて元の高さを取り戻す点を利用して、半開きの防火シャッターのジャッキ・アップが行える。これはなかなか上手い。

復元して動くようになる装置類も、TMDの『局所的に時間を戻して新品にする』能力を巧みに説明するもので、設定との整合性も高く上手い。植物の生長も同様で、こちらは局所的に時間を進ませている。

物体を移動する……遠くのアイテムを引き寄せる能力がTMDに付加される。Haf-Life 2のGravity GunやDead SpaceのKinesisと酷似し、使われ方も共通(爆発性のボンベを投げつける等)。ゆえに、このゲーム独自の性格を醸し出すのは難しい。TMDの時間を操る力とは関連しないように思える。

なお、『弾薬のリロード』と『アイテムを拾う』キーが同一の為、意図せずにリロードが起きるのを防ぐ為に、引き寄せる能力でアイテムを拾うのが賢い運用であった。E99Techアイテムを拾い集める(TMDアップグレード用のカネ集めに相当する)労苦は、これまたシューターとは相容れず、二度とやりたくない主な理由のひとつではないだろうか。また、『落ちている武器だけは、なぜか引き寄せられない』という理不尽さもある。

巨大ファンの時間を止める……これはDeadLockという呼び名が付いた、時間を制止させる青色のバブルだ。Dead SpaceのStasis Fieldと酷似しており、使われ方から言っても個性は弱い。

敵兵を骸骨にする……これも局所的に時間を進めるのだから、理屈としてはおかしくない。頻繁に使えてしまうと無敵に相違ないが、重装兵士には利かない、といった弱点がある。

敵兵を死肉漁りにする……ゲーム的には大変面白いギミックである。敵の集団の中の一人をグールに変えてしまい、敵兵とグールとを相討ちさせるという寸法だ(グールが勝つ)。理屈の上でも、主人公が遭遇する化け物は、E99という未知の放射性物質の影響を受けた生存者のなれの果てであるのだから、整合性はある。ただ、ゲーム的にシューターらしい解決法ではなく、もっとバリバリ撃ちまくりたいプレイヤーには余計なものかもしれない。

衝撃波で敵を押し返す……Dead Spaceに出てくる武器のひとつにこのような能力を持ったものがあった。TMDの時間操作とは、理屈から言うと、あまり関連しないように思える。破裂する虫を防ぐという使われ方も酷似で、個性は全くない。

壁の文字を読める状態にする、テープレコーダを復元する……情報伝達手段として面白い。ただし、スピーディーなアクションの中休みに、テープの再生が終わるまでその場で立って聴いていられるかと言えば、非常に難しい。

足跡の表示……Dead Spaceに出てきたガイド機能を、Singularity風にアレンジしたものだろう。TMDから理屈を考えると、少し先に行った未来を写していると考えられなくもない。未来を写すカメラみたいなものだ。未来の写真を見てそうするとは限らない、という矛盾もあり得るわけだが、リニアのゲーム進行に限って言えば、必ずそうせざるを得ないわけで、常に真だ。

時間ギミックは物語的な演出にこそ活用されているが、プレイフィールを際立たせる仕掛けはごくごく一部に限られている。既にどこかで見た借り物の仕掛けは、あまり良い印象として残らない。もっと深くプレイに作用してくる方法を編み出していたならば、Singularityの評価はもっと上がった事だろう。また、カジュアルなサード・パーソン・アクション風味にしたかったのか、硬派のファースト・パーソン・シューター風味を残したかったのか、どっちつかずなデザインは、このゲームの知名度や魅力を増す救世主にはならなかった。

私の評価:

 Singularityは『スト-リー』が最も体験し甲斐がある。
 ゲーム性は、カジュアルなアクション寄りで、古典的なシューターの良さは薄い。
 パズルはそれなりに楽しいが、もう一つズバ抜けた仕掛けが欲しかった。
  ※なお、マルチプレイに関しては評価に含めていない。
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